散華の麗人
そんな雅之を意に介さずに一正は話す。
「不信感を持った秀尚は陸長と手を組もうとするはずや。何故なら、陸長はわしに不満を持っとるし……今のとこ、陸羽派やない。」
一正は全てを見通しているような目をする。
「そうなると、第三勢力が出る。陸羽派でも現……元国王派でもない。新国王派がな。」
(ややこしいことやな。)
名簿を見て大きく息を吐いた。
「貴様はどうするつもりだ。」
「その勢力が勝手に陸羽派と衝突してくれればわしらは漁夫の利となるが、この状況で秀尚はそれを避けるやろう。」
「第一、そんな手に乗るような連中じゃない。」
「そうなると、現在わしらと衝突している陸羽派を秀尚がどうするかやな。」
雅之はじろりと一正を見る。
「陸羽派に加わるのか、わしらに味方するのか。あるいは両方を利用するつもりでいるのか。」
「貴様はつくづく、厄介事を引き連れてくる男だな。」
「せやな。そこが取り柄や!」
はっはっはっと一正が笑う。
そんな場合ではないという雅之の冷たい視線もお構いなしだ。
「今すぐに動くのは不利益のはず。その間に手を打たねばな。」
「あぁ。」
頷く一正を横目で見て雅之は別の棚へ向かった。
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