彼氏が犬になりまして



 真っ赤な顔で『大好きです!』と言われて以来、恋人として過ごしているけれど、まさか『大』付きで好きだと言われるとは、予想していなかった。
 自分から告白して欲しいと言ったものの、あの時はアタシも顔が熱くてまともに優輝の顔が見られなかった。

「なに、にやにやしてんの?」

 知らず知らずに顔が緩んでいたのか、不思議そうにアタシの顔をのぞき込んでくる。

「シアワセなこと、考えてたの」

「それ、オレも関係してる?」

「まぁね」

「そっか」

 満足そうに笑って、また前を向く。思いのほか、繋いだ手に力がこもった気がする。

「あ、見て見て!新発売だって!」

 目的のファーストフード店の近くまで来て、店の前に立ててある宣伝旗に新発売のシェイクの文字を見つける。チーズケーキ味らしい。

「わーどうしよ。悩む~!」

 シェイクはいつもモカ味と決めているけれど、新発売の文字には揺らいでしまう。かと言って、冒険して撃沈した時の痛手も怖い。

「オレ、モカ味買うから、半分こするか?」

「うん!ありがと!」

 見事に解決策が見つかって、意気揚々と店に入る。

「アタシ、いつものハンバーガーとニコニコポテトね!あと、チーズケーキシェイク!」

「はいよ」

 優輝に並んでもらって、アタシは席取りだ。窓際の席の二人組がちょうど席を立ったから、そこを陣取る。

 しばらくして、優輝が二人分の食事をトレーに乗せて歩いてきた。

「ん。ありがと」

「おう」

 優輝はアタシと同じハンバーガーのダブルサイズ、皮付きポテトとモカシェイクだ。

「いただきまーす」

「いただきますっ」

 とりあえずニコニコポテトを一つ頬張る。せっかく美味しいのに、冷めると台無しになるのが難点だ。

「美希はほんとニコニコポテト好きだよな」

「好きよ。かわいいもん」

 ニコニコポテトは、お子さま向けのポテトで、その名の通り笑った顔をかたどってある。時折ハート形のポテトが入っているらしいのだが、まだ見たことはない。

「一個ちょうだい」

「いいよ。はいっ」

 優輝の口にポテトを一つ頬張らせて、自分も一つ食べる。

「ん。ポテトだ」

「ポテトだからね」

 口の中が塩っ辛くなってきたから、いざ冒険に踏み出すことにするーーつまり、チーズケーキシェイクを飲んでみる。
 ストローをくわえて、まずは一口。

「わっ、これ、ほんとにチーズケーキの味がする!」

 濃厚でコクのあるなかなかお高いチーズケーキの風味なんだけど、ひんやり冷たいからか、喉通りもよくて飲みやすい。
 優輝にも一口飲んでもらうと、同じように感動している。

「ほんとだ。まんまチーズケーキだな」

「うん。美味しい」

「オレもコレけっこー好き」

「半分こね」

 
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