T&Hの待望
「なんで今更俺なんだ?」
「そんなの知らないよ。待ってんだから早く行けば?」
「俺に用は無いぞ?」
「兄貴になくても彼女にはあるの!」
「告白の次は呪いか? 髪の毛採取か?」
一本もやらんぞもったいない。
「知らないってば!!」
勝手に呪われてろよ!
だいたい兄貴には『必殺呪い返し』があるだろ!
「何だそれ。それも俺の伝説か?」
「うん。第23条第2項だったかな」
「伝説というより条例だぞそれは」
「うん、俺もよく分かんない」
冗談か本気か分からない問答を、極めて真顔で展開する。
なかなか出て来ない悠一に業を煮やしたのか、三笠は脇の男子生徒に何やら耳打ちした。
怪訝な表情で軽く頷いた男子生徒は、こっちに向かって再び声を張った。
「T&Hの件で話があるとか言ってるぞ~!!」
その一言で、2人は同時に固まった。
やがて黙って顔を見合わせ。
瞬時に何かを通わた兄弟は、同時に足を動かす。
どうやら伸一の返事は間違っていなかったらしい。
彼女は『黒川兄弟』に用があったのだ。