恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~


夕暮れの帰り道、西陽がきつくて買ったばかりの日傘を差した。
恵美と飲みにでも行きたかったけれど、彼氏と会うからと振られてしまい仕方なくの家路。



「平日で、あの客入りかぁ。今週末ヤバそう」



あれから、職場に顔を出すと案の定声をかけることもできなかった。


この時期はお中元の承りが多く、接客の他に店舗からの商品出荷も多いので兎に角忙しい。
一年を通して、お歳暮シーズンに次ぐ繁忙期と言える。


この日は4人体制だったはずだが、店長とカナちゃんの二人で店内を回していた。
他の二人は多分在庫整理か何かでバックヤードにいるのだろう。


後輩のカナちゃんは仕事が丁寧で確実なので信頼できるのだが、少々接客に時間がかかる。
お客のフリをして暫く商品を見ていたけれど、仕方なくこそっとレジカウンターの内側にシュークリームの箱を置いて、メモとボールペンを拝借した。



「一個ずつあります。みんなで食べてね」



ペタンと目立たないところに貼っておいた。

恵美の勤めるカステラ屋は、少し暇なようだった。
店長と話しているようだったので、向かいの笹倉の店に行くとやはり客のフリをして季節限定商品などのチェックをした。


他店が忙しい時は、急遽手伝いに向かうこともある。
だから他店の商品もこうして勉強しておくことも大事な仕事なのだが、勤務中には中々そんな時間はない。




その後は恵美とゆっくりショッピングをして、私は結局日傘だけを買った。
自宅アパートまで、あと少し。


三叉路の右へ行けば私の家で、左へ行けば笹倉のマンションだ。実は目と鼻の先。
こういうのも、私達の関係を作っていった一因でもあるかも。


今日間近で見た、黒い制服姿を思い出す。
レジカウンターでギフト商品の包装をしていた。


近くで見ると、笹倉の仕事は早くて綺麗だ。
接客もスマートで、仕事中の笹倉は3割増格好よく見える。



ピピッと淡白な着信音が鳴る



携帯を開くと笹倉からのメールだった。



「今晩いくから」



お前はサルか!!



くくっと笑って「無理」と返信しておいた。
明日は金曜、早番だし。


金曜の朝は納品が多い。
今夜はゆっくり休みたい。




あれ、そういやあの名刺どうしたっけ。
急に思い出したのは、ランチ時の失礼な顔だった。

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