恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
ぶつけた足も右肩も


板間で揺らされる肩甲骨も


なんの準備もなく繋がった内側も


痛い。


ここまで彼にさせておいて、こんなふうに思うのはおこがましいのかな。
不思議と行為そのものは怖くなかった。


彼が、彼でなくなるのが怖い。


だから、逃げるつもりなどないのに。


私が逃げないように、重ねた掌を強く床に押さえつけるから、抱きしめてもあげられない。



逃げないのに。



私たちは、こんなにもすれ違ってたのかと。
意思の疎通のできないことで、改めて気付いた。


ごめん、と耳元で、かすれた声がした。


重なる手を握り返して
私は初めて、彼に尋ねた。



「私が好きなの?」
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