恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
私は、怒らせるような、傷つけるような事しか言ってないのに。



「苛立ち紛れでも、聞けて良かった。少しずつ信用してくれりゃいいよ」


「なんで…?」



彼は助手席のシートにかけた手を滑らせて、私の横髪をそっと撫でた。



「なんで私なの?」



こんな面倒な女じゃなくても。
いくらでもいるじゃない?


今まで愚問だと思ってた。
でも。


彼が、体を乗り出して更に距離が縮まって、お互いの鼻先が掠めるくらい。


肌の、温度だけが伝わるくらいの距離。


そのまま、唇に触れるのかと思った。


けれど、切なげに瞳が細められた次の瞬間、向きを変えて額に触れた。


答えは、わからない。


この人は難解なパズルのようで。


簡単には解けそうもない。
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