恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
私は、箸を持ったまま手を止めた。
ふ…と、深く息を吐き出す。



「私は、自分勝手かな」


「勝手だよ。瑛人君にだって、考える義務も選ぶ権利もある」


「…私が産むって決めてる以上、笹倉の選択肢は父親になるか、子供見捨てるかのどっちかしかないじゃんか。それに」



ざわつく店内で、恵美は私の言葉を真剣に拾ってくれている。



「私は、誰の子かくらいちゃんとわかるけど…笹倉にはわかんないでしょ」



ずっとふらふらしてた私に、貴方の子です、なんて言われて。
彼はきっと否定しない。
でも、心のどこかでひっかかるんじゃないか。


それは種になって心に埋まって、いつか芽を吹くんじゃないかと思う。
笹倉を信じないわけじゃない。


ただ、感情は理屈じゃない。



「親がどんな状況だって、子供には関係ない。どんな事情であれ、皆愛されるべきだと思う。私は愛せる。でも、笹倉にそれは無理強いできない」

「…瑛人君なら、喜んで受け入れると思うのに」



恵美は私の説得は諦めたようで、笑ったけれど少し悲しそうだった。



「どうかなぁ」

「ねぇ。もう、瑛人君とはどうするつもりもないって、このまま職場も変わって離れていくと決めたのなら」



交わった視線は真剣で、嘘や誤魔化しはしちゃいけないって不意にそう思った。



「叶わないことが前提なら、自分の正直な気持ち、見えてこない?」



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