恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~



父親に電話した。
病院での再会から、母の病状を尋ねるのも兼ねて何度か連絡はとるようになっていた。


母は、最初は父が帰ってくるのを拒んでいたようだが。
私には、ずっとお父さんに会いたいとぼやいていたのだから、それが強がりなのはわかりきっている。


今は少しずつ、以前の仲の良い夫婦に戻ってくれたら、それが母にとっては一番の薬だ。



「もしもし、お父さん?お母さん機嫌よくしてる?」

『ああ、入院中は酒の飲みようもないしな。仕事帰りだから夜しか寄れないが、毎日顔を見るようにしてる』

「お父さんも仕事あるし、大変なのにごめんね。お父さん、家に戻ってきてるんでしょう?」


まず最初にご機嫌をとっておくのはセオリーだろう。


『あぁ、まだ一人で住んでた家もそのままなんだが、年内には解約しようと思ってるが』

「じゃあ、12月中に里帰りするわ。」


で、爆弾投下。


「産休に入るから、里帰り出産するわ。その後は、復帰先によってはまた住むとこ変わるかもしれないけど」


投下完了。
携帯の向こうは、数秒の沈黙ののち。


『は?!なんだ、どっ……げほっ』


むせている。


「結婚はしないけど、子供産むことになったの。ごめんねお父さん、少し迷惑かけるけど」


勢いをつけて一息に言い切った。
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