恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
『お前、…相手はあいつか、病院まで付いて来てたヤツか!』

「違うってば。あの人は偶々一緒にいた親切なお友達!ってあの時も言ったでしょ、それは」



あの時も、病室で『一緒に来た男は誰だ』としつこく聞かれたのだが。
ただ親切で送ってくれたのに、『付いて来てたヤツ』とは酷い言われようだ。


『だったら相手は…』

「初孫だよお父さん!お母さんも孫ができるってわかったら、ちょっとはしっかりするんじゃない?

予定日は6月末なんだけど、年末の忙しい時期に、走れない力仕事できないの妊婦は邪魔にしかならないしね。

新しい人がすぐ入ることになったから、12月頭には産休もらえることになったの」


相手とか結婚とか。
そんな追求はして欲しくなくて、父の言葉を遮って捲し立てる。


『お前…』


言葉を失くした父の溜息が電話越しに聞こえた。


「ごめんねお父さん。自分勝手なことして」

『何言っても聞かないつもりだろう。だったら上っ面で謝るな』


鼻で笑いながらそう言う父に、心から感謝する。


『6月末か。それまでには、母さんも退院するだろうし。喜ぶだろうな』

「喜んでくれるかな」

『当然だろう。母親の方が、こういうことは受け入れるのが早いと思うぞ』


初孫だしな。
そう言ってくれた声が明るくて、ほっとした。



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