恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
あとは、私が今までしていた事務仕事をカナちゃんに引き継いで、店長のサポートができるようになってもらうだけだ。


といっても、それほど難しい内容ではない。
だから、引き継ぎにそれほどの時間は必要なく、新しい人が商品を覚えて戦力になってくれればもう、何の心配もない。


12月1日から、私は余っていた有給を消化してそのまま産休に入ることになった。


笹倉とは、もう話すこともなくなっていた。


なぜだか、倉庫であったりすれ違ったりする偶然さえも起こらずに日々が淡々と過ぎていく。


お互い連絡を取ろうとしなければ、こんなにも簡単に他人になっていくものなんだな、と。


向かいの店の、黒い制服姿を茫洋と見つめた。


背中だけしか、見れないけれど。
目が合ってしまえば、もうどんな顔をすればいいかわからない。


今まで、どんな顔で挨拶していたのかも、もうわからなくなってしまった。



12月まで、後少し。


休みに入れば、私の姿が見えなくなって笹倉が不審に思うかもしれないので、早々にアパートを引き払う準備もしていた。


もっとも、そんな心配は無用かもしれない。


何日もたって、繁忙期が過ぎて暇になった頃に、漸く気づくのかもしれないけれど。


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