恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「うぇっ…ぐぇぇええ…っぷ」

「ちょ…もうちょっと控えめにできないの」


そんなこともし出来たら、それは仮病だと思う。


台所の流しで項垂れながら言い返してやろうかと思ったけど、今声を発したら、完全に出てくると思い諦めた。


若干引き気味の恵美を、苦しさから涙の滲んだ目で睨み上げると、慌てて背中をさすってくれた。


「つわりってほんとにそんな風になるのね」


うん、私も初めて知ったよ。


ごはんの匂いで吐きたくなる。
その意味がわかった。


とりあえず気が済むまで嘔吐して、かといってすっきりするわけじゃないが。
口を水ですすいだ。


「ありがと。あー…… 疲れた… 」

「構わないから、ちょっと休んでて。私続きやるから」


引越しまであと何日もない、というところまで来て。
このつわりで、荷造りが全く捗らず、見かねた恵美が休みを合わせて手伝いに来てくれた。


それだけじゃなく、引越し当日も休みをとって手伝ってくれるという。


「うちの店は、お歳暮には需要少ないからね。他の洋菓子店に比べればまだ休み合わせやすいわよ」


それでも無理を言ってくれたに、違いないだろうけど。
 

一度はソファに座ったものの、気を取り直して引越し業者から買ったダンボールを組み立てる。



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