恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
こうして話ていると三輪さんはやはり至って普通で、あの時はなぜそうなってしまったのか。
魔が差した、という言葉がしっくりくるんじゃないだろうか。


改札を抜けたところで彼女の歩みが少しゆっくりになり、人の空いた所で立ち止まった。


「…大切な仲間内をかき乱して、本当にすみませんでした」


そうだな、あれから、飲みに行こうと騒ぐのは何も知らない小西だけで。
だけど、狭山や恵美ちゃんとそんな機会がなくなったのは、三輪さんのせいじゃない。


「別に、もう気にしてないよ。俺も、多分狭山も」

「全く何も気にされないのも、哀しいですけど」

「それじゃあ、ただのかまってちゃんだろ」


苦笑してそう言い返せば、三輪さんも少し笑って。


「当たってますけど傷つきますよ」


そう呟いた、その後で。
彼女の視線が少し逸れて、あ、と声が漏れる。


同時に、俺の視線もそれを辿って。
駅から出て行く、少ないながらの人波の間に行き着いた。


目を数度瞬いて首をかしげる、狭山が立っている。
不思議に思い、俺も首を傾げた。


「あれ、なんで」


まだ駅にいるんだ。


狭山は今日、中番だったのか、俺達よりずっと早く店を退出するのを、見かけた。


彼女の立ち位置は俺が帰る方角、俺と狭山の自宅のある方角からで。
今から駅に向かうところだったのだろうか。


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