恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「何人かには聞こえてたよね、どんな噂になるかな」


女が多い職場は、兎角外野が賑やかだ。
にや、と口元がにやける彼女は意地悪い。


「別に噂とかはどうでもいいから」

「虫除けになっていいもんね」


話を戻そうとしたが、一息にいちごミルクを飲み干して、立ち上がった彼女を見上げる。


「もう時間だからいくね」

「じゃなくて、狭山の居場所」

「連れてくから。でもお正月明けまで待って。とにかく今は仕事以外に時間なんて割けないでしょ。顔色悪いよ、瑛人君」


その言葉に、少し安堵したが気はどうしても早ってしまう。
せめてどこにいるかぐらい知っておきたいのだが、彼女は首を横に振る。


「どうせ、一月に入ったら遊びに行くって約束してたの。それまでみさに連絡取らないでよ、勘付かれて私からも逃げられたら、ほんとにわかんなくなるわ」

「……」


そこまで拒否られてるのか、と結構な打撃を受けた。


「そこからどうなるかは知らないよ。でも、私はやっぱりふたりは一緒にいるのが良く似合うと思う」

「狭山にもそう言ってやって」

「そこは自分でなんとかしてよ、カッコ悪い」

「わかってるよ」



わかってるよ。

もう充分。


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