恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
今はバレンタインの時期だから、店は忙しい筈だった。


休日を潰させるのは申し訳ないので、敢えて仕事の日を選んで電車で来て、彼の仕事上がりのタイミングで駅で待ち合わせ。



「悪い、待った?」

「そうでもないよ」



2月の空気は凍てついて身に刺さる。
なので、私の格好と言ったらダウンとマフラーでもっこもこ。


絶対笑われる、と思ったけれど。


彼は私の頬をぺた、と触った。
ずっとポケットにいれてたのか、めちゃくちゃ温かい手のひら。



「つめた!やっぱり冷えてるだろ。大丈夫かよ」

「へーき。ってか、それもうちょい。あー…ぬくい」



頬にあるホッカイロ並に温い手を掴んで、暫く悦に入る。
そうしてると、もう片方の手が出てきて反対頬を触る。


あれ?



「こっち、温くない」

「片方だけ、カイロ入ってたから」



そう言って、温い方の手をつないで一緒にコートのポケットに入れた。
確かに、中はほかほかに温い。


もう片手で、私の足元に合った荷物を笹倉が肩に引っ掛けて、どちらからともなくマンションに向かう。



「明日休みだし、迎えに行ってやったのに。お腹冷えたらどうすんの」


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