恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
食後のコーヒーは流石に私が入れさせていただいた。
といってももちろんインスタントなんだけど。


まったり飲みながらテレビを見ていたら、笹倉が急に思い出したように立ち上がり、小物入れの引き出しから何かを手に取った。



「はい、これ」


かちゃ、と金属音がして、笹倉の指からぶら下がるそれを、私は受け取った。



「あ、合鍵」

「うん」

「…と、なんで猫?」

「お前、猫っぽいから」



合鍵に繋がれた、ガラス玉の目をした猫のキーホルダー。



「私、猫?」

「しかも野良」



む、と唇を突き出して、拗ねてみせた。
良い意味じゃなさそうだから、聞き返さないことにする。


少し持ち上げて、電灯に照らすとガラス玉が光って、綺麗で。
悪い気はしなくなった。



「ありがと」

「ん」



笹倉が、今度は隣に座る。
少し手を伸ばして、向かいにあった自分のカップを手元に引き寄せた。



「明日、俺休みだけどどうする?」

「あ、私、店に行く予定で店長に連絡してあるの」



この度の経緯を、報告しなければならない。
やっぱり結婚します、なんて顰蹙ものだけど。


流石に今度は、辞めてくれなんていわれないだろうか。
ちょっとどきどきする。


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