恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~



もー……痛いし。


どんくらい、時間が経ったんだろう。


怖い。もう、痛いの嫌だ。


手足の指先は、痺れて感覚がない。


それなのに、痛みはなくならない。


骨盤が軋むような、内側から割れるような痛み。


息はどんだけ吸っても苦しいし。


膝がガクガク震えて、身体がちっともいうことを聞かない。



「先生!なんか、……!こんな……」



遠くの方で声が聞こえるけど、もう何言ってんのかよく聞こえない。


私に言ってるのか、どうかもわからない。


苛立ちで眉根を寄せたその時、頬に熱いものが触れて、そこから急に感覚がクリアになった。




「美里、美里!ゆっくり息吸えって!焦んないで、深呼吸しろ!」



さっきまでより、今度ははっきりと聞こえた声。
頬に触れたのは、瑛人の掌だったんだと気付いた。


利き手にも、大きな手。
ずっと繋いでいてくれたのだと、傍にいたんだと思い出した。


目を開けると、揺れる視界の先に瑛人の顔が見えて。
言われる侭に、意識してゆっくりと深呼吸する。



あんまり、情けない顔してるもんで、思わず唇が綻んだ。
切羽詰ったような、今にも泣き出しそうな。



「ふ……死にそうな顔」



あぁ、そうか。
そんな顔、させてるのは私か。


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