恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「私のことも馬鹿にしてる?」



ますます、声が出なくなった。
唇だけを懸命に動かすけれど言葉が見つからなくて、せめてそんなことないって言いたい。


なのに今の自分の状況で言葉だけで否定しても、現実味がない気がして。
初めて親友を怒らせてる、その事実が手のひらに汗を滲ませる。


結果の沈黙は、恵美の顔を歪ませてしまった。



「ごめん、言い過ぎた。アルコール入れすぎたかなぁ」



視線を逸らして、もう戻ろうよって声をかけてくれたけど、彼女と視線が合うことはその日最後までなかった。
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