恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
恵美の唇が何か言おうとして、一度は強く噤んだ。



「恵美、あの…」

「みさ…信じらんない。さっきあんな話したとこなのに…」



慌てて弁明しようとすると、被せられた声が余りにも冷ややかで、言葉が続かない。



「口紅、ついてますよ」


藤井さんを一瞥すると、踵を返して席へと戻って行ってしまう。



「えみぃ…」



やっとのことで出た声は小さいけど、聞こえてないはずないのに。
振り返る素振りも見えないまま。


怒らせたんじゃない。
軽蔑された、今度こそ。



「こわ…あの子、一緒に昼食べてた子だよな?見た目気弱そうなのに」



口元を親指で拭いながら、無神経にさえ聞こえる言葉を放つ藤井さんの顔面に、ばしん!と利き手を振り下ろした。



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