恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「なんでそう思うの」



隣の部屋へ向かう彼を見上げながら聞いた。



「一人を大事にできないお前が、変わったとは思えないから」



境目で振り返った彼は、無表情だった。



「今日泊めて。疲れたし寝ようや」



隣の部屋、寝室へ向き直った彼の声は背中越し。
朝、シャワー借りるわ、って言った時には部屋の中から声だけ届いた。


そうだ。私は何一つ変わってない。
だから、真剣に答えを出すとしたら。


きっと、一人になる選択しか出せない。


体育座りの膝の上、顎を乗せて暫く動けないでいたら、隣の部屋から早く寝るぞーって少しかすれた声がする。
ああ、本当に眠い時の声だ。


漸く重い腰を上げリビングの灯りを消すと、寝室からの薄く漏れる灯りだけが頼り。


滑り込んで引き戸を閉じる。
彼はもうベッドに潜り込んでいて、目を閉じていた。


半分空けられたスペースは私の領域だ。


その領域の薄いタオルケットの中、彼に背を向けて潜り込む。
同時に抱きすくめられて、彼の顎が頭のてっぺんにささった。


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