2LDKの元!?カレ





西野くんと二人で、ル・シエルに到着したのは予約時間の十五分程前。

コミヤマさんは私の姿を見つけると、いつもお客にしているのと同じように丁寧に頭を下げた。

「小松様。お待ちしておりました」
「こんばんは、コミヤマさん。この間はありがとうございました。お借りした傘は忘れてしまったので、後日お返しに上がりますね」
「いいえ、御返却いただかなくて結構です。あの傘は突然雨が降った際に、お客様に差し上げているものでございますから。では、お入りくださいませ」

コミヤマさんはそういって、金色のドアノブに手を掛ける。

その瞬間、抱えていた期待と不安が一気に膨らんで胸が苦しくなった。

今からこれじゃ先が思いやられるじゃないか。

そう思いながら店内に足を踏み入れると、中世のフランスにトリップしてしまったかのような錯覚に襲われた。

それくらい、内装も調度品も抜け目なく、クラシカルな雰囲気に統一されている。

「……すごく素敵」

ため息交じりに呟きながら立ち止まると、西野くんは私の腰に手を添えた。

「さ、行きましょう」
「えと、うん」

その仕草があまりにも自然すぎたからなのか、何となく彼の手を振り払えずに、私はまた歩きだす。

そんな私たちを、レセプションの女性は微笑みながら迎え入れてくれる。

それから持っていたカバンをクロークに預けると、やって来たウエイターに案内されて席へと向かった。


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