2LDKの元!?カレ
私は仕事以外の大切なことは、ついつい忘れてしまう性質(たち)だ。
おそらく、私の頭脳のキャパシティは自分が思うより小さいのだろう。
仕事優先の思考回路は、優先順位の低い日常のイベントをことごとく消去してしまう。反対にに、聡のキャパシティはとても大きい。
頭の中には六法全書が一冊そのまま頭の中に入っていて、なおかついろいろなことを考えて記憶する能力にたけていて、仕事に忙殺されているのは同じはずなのに、こんな私の事もちゃんと考えてくれていて。
聡のそう言うところ、やっぱりすごく尊敬する。
「本当ならさ、志保子のお気に入りのパティスリーで、ホールケーキを予約して、中抜けして取りにでも行けばよかったんだろうけど。今日、買えたら買ってこようか?」
「そんな、いいよ。だって、どうせ食べきれないし。聡、ケーキ苦手でしょ?」
「いや、でも、志保子の誕生日くらいお前の好きなものを一緒に食べたいっていうか」
聡は、甘いものは大の苦手だ。
そのくせ付き合いだしてからずっと、私と一緒の時だけは平気な顔をして食べてくれていた。
ケーキを大胆にフォークですくって、口に放り込んで、『甘いな』といいながら、結局全部平らげてくれる。
そんな聡の優しさを知っていて、なのにそれに触れるのが怖くて、ついかわいげのない言葉を選んでしまう。