オクターブ ~縮まるキョリ~


「春瀬一輝です。陸上部で短距離やってます。」


そう言い出しただけで、クラスの女子たちが「知ってるー!」と合いの手を入れる。
なんだか、アイドルのコンサートみたいだ。


「えーと、趣味はサッカー観戦とゲームと、まあスポーツ全般が好きです。
このクラスは知らない人ばっかりなんで、これから友達が増えるのが楽しみです。
よろしくおねがいしまーす!」


そう言って春瀬一輝はクラス中をぐるりと見渡し、全方向に笑顔を向けた。
クラス全体(主に女子)がイエーイと声をあげ、拍手が鳴り響く。

やっぱり、春瀬一輝は人気者だ。
当然のことだ。
あのルックスに、あの爽やかさ。
しかも「知らない人ばかりだから、友達が増える」だなんて前向きな発言。
私は「知らない人ばかりだから、これから不安」って思っていたのに。

ファンというより、もはや尊敬に値する。
仲良くなりたいという気持ちもあれば、自分もあんな風になりたいという気持ちもある。

とにかく、春瀬一輝のことが、私は大好きだ。

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