オクターブ ~縮まるキョリ~


「すみません、あの…」


声をかけると、その男の店員さんは無言でこちらを振り向いた。
その顔を見て私は目を見開く。


「あれっ?同じクラスの…」


…………誰だっけ。


名前がでてこない。


同じクラスの、クラスメイトのはずなんだけど。
見たことのある顔なんだけど。
たぶん、廊下側から2列目の席に座ってる彼のはずなんだけど。


店員さんもといクラスメイト(たぶん)は私が口をパクパクさせていると、私の言葉の続きを言ってくれた。


「……永山颯平(ながやまそうへい)」

「あっ、そうだ永山くん!」


永山くんは私がすぐに名前を思い出せなったことが不満なのか、すごく不機嫌そうな顔をした。


「ご、ごめんね、名前でてこなくって…」

「いや、別に構わない」


私が慌てて謝っても、永山くんの表情は変わらなかった。

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