オクターブ ~縮まるキョリ~
「それにしても、珍しいな」
永山くんは意外にも会話を続けてきた。
「え?何が?ショパン?」
「いや、わざわざCDを買うってのが。
今の時代、パソコンでダウンロードできるだろ?」
永山くんの疑問はもっともだ。
確かにこのご時世、わざわざCDショップに行かなくとも、楽曲データは家で買える。
ただ、
「私、パソコンわかんなくて」
21世紀の女子高生なのに、私にはそのやり方がよく分からないのだ。
「それに、なんとなく自分の部屋にCD並べて飾っておきたくて。
って言っても、お金ないからそんなに買えないんだけどね」
私がちょっと照れながら言うと、永山くんは無言でうんうんと頷いた。
CDを飾りたいという気持ちに共感しているのか、それともお金がないことに共感しているのか。
そのあたりは分からなかったけれど、私の話を聞いてくれていることはよく分かった。
「じゃあ俺、仕事に戻るから」
「うん、ありがとうね」
永山くんはそう言って軽く手を挙げると、通用口からお店の裏側へと行ってしまった。
私も手を振ってみせたが、きっと彼の視界には入らなかっただろう。
私はCDを片手にレジへと向かった。