オクターブ ~縮まるキョリ~
*春*


春。

あの日から三ヶ月が経ち、私は高校二年生に進級した。
桜が舞い散る中、新しい季節に胸をときめかせ…
といいたいところだが、実のところその「ときめきタイム」はたった今終了した。


「なんで……」


新しいクラスが貼り出された、掲示板の前。
私の春は一瞬にして散った。
桜の花びらが一枚、私の目の前でひらひらと踊るようにして地面へと落ちていった。


「しーほ!おはよ!」


名前を呼ばれて後ろを振り返ると、そこには笑顔の友人が立っていた。


「あ、香織…おはよう」

「ちょっ、詩帆なんか暗い!なに?クラス替え微妙だった?」

「うん…香織とクラス別れちゃった…ていうか、仲良い子がみんな他のクラスで、私だけC組なんだけど…」


そう。
これからの一年の明暗を分けるクラス替え。
私は仲の良い友達とことごとく離ればなれになってしまったのだ。

中でも、香織と別れてしまったのはかなりの痛手だ。
香織は高校に入学してから最初にできた友達で、私の友人関係の「始まり」を担う人物なのだ。


入学直後、人見知りで縮こまっていた私に、最初に話しかけてくれた彼女。
明るくて活発な香織のおかげで、連鎖的に友達が増えていったのだから、香織が居なかったら、私は今でも一人だったかもしれない。


そして私は今、また一人になろうとしている。

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