オクターブ ~縮まるキョリ~
*風*


席替えから一週間。
私の席の周りは、ぐっと賑やかになった。


休み時間のたびに、男女問わず誰かしらが春瀬くんの所へとやってくる。
ちょっと私が席をはずすと、私の席に誰かが座っていることも珍しくない。
そんな時に私が席に戻ってくると、必ず春瀬くんは気付いてくれる。
今だってほら、教室に入ってきた私の姿を見つけて、すぐに友達に声をかけてくれた。


「あ、樫原帰ってきたよ。そこ、席あけてあげて」

「っと…、悪い樫原、席借りてた」


私の席に座っていた男子が、ぱっと席を立つ。


「ううん、私こそ、お話してるところごめんね」

「いやいや、こんなヤツに遠慮はいらねーって!」

「おい一輝、『こんなヤツ』って何だよ、ひでーな!」


春瀬くんと一緒に、周りに集まってた子たちがみんな一緒に笑う。
私も一緒になって笑ってしまう。
なんか、春瀬くんを通じて私もみんなと友達になれたみたいで、すごく嬉しい。


< 25 / 107 >

この作品をシェア

pagetop