オクターブ ~縮まるキョリ~


「そーいえば、今日のホームルーム何やるんだろーな?」


春瀬くんがぐんっと伸びをしながら切り出す。


「さあ?花井先生のことだから、またノープランなんじゃねーの?」

「だったら俺、ドッヂボールやりたい!久々にドッヂ!!」

「はぁー?一輝、発想が小学生すぎ!」

「いーじゃん、たまには!交流しよう交流!樫原もドッヂやりたいよな!?」

「えっ!?わ、わわ私!?」


急に話をふられて、私は大袈裟に驚いてしまう。


「えと、ドッヂ……」

「はいみなさん、席についてください」


私は答えようとしたものの、続きは別の声にかきけされた。
声のした方を見ると、花井先生が教卓でトントンとプリントを揃えていた。
あの先生、いつの間に教室に入ってきていたんだろう。
本当に地味で、存在感が無い……。


全員が着席すると、花井先生は静かに話し始める。


「えー、今日のホームルームは、特にやることもありませんので自由にします」

「せんせー!!ドッヂボールやりたいでーす!!」


花井先生が言い終える前に、春瀬くんが立ち上がって進言する。

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