オクターブ ~縮まるキョリ~


明日歌はいつからか、「ちょっと悪いグループに属する怖い女子」になっていた。
一緒に高校受験をして、一緒に合格して、でも別々のクラスになってしまったのがきっかけ。
一年生の一学期の頃は普通に話していたのだけど、夏休みに入った頃から明日歌は変わった。
単純に、付き合う友人が変わってしまったのだ。


綺麗なロングの黒髪は明るい茶色に染め上げ、化粧もかなり濃くなった。
派手な子たちと夜中まで遊んだりして、花火大会の日に騒いでいるのを先生に見つかって、
職員室に呼び出されたなんていう噂も聞いた。
大学生や社会人と合コンをして、付き合ったとか別れたとか。


私の知ってる明日歌は、いわゆる「清楚なお嬢様」で、優しくて上品で、でも嫌みが全然なくて、本当にお姫様だったのに。



明日歌は、変わってしまった。



「樫原さんも、よろしくね」



……『樫原さん』


私の呼び方すらも、変わってしまった。

これまでは「詩帆」と呼んでくれていたのに。

明日歌は「お姫様」じゃなくなってから、私のことを友人として見てくれなくなった。

口角を無理やりあげた、笑っていない「笑顔」が怖い。



「うん、よろしくね、澤井さん」



私も、明日歌を「明日歌」とは呼べなくなってしまった。




席替えは、私を爽やかな蒼い希望で満たしつつも、ブルーな気持ちにもさせた。


< 24 / 107 >

この作品をシェア

pagetop