オクターブ ~縮まるキョリ~


クラス全員が春瀬くんの方を見て、どっと笑う。


「まじ?ドッヂボールとか懐かしすぎねえ?」

「え、でもあたしもドッヂやりたい!」


みんながわいわいと自由に騒ぐ。
でも大多数は、春瀬くんの意見に賛成のようだ。


「では、見たところ校庭も空いてますし、今日のホームルームはクラス全員でドッヂボールということで」


「イェーーイ!!はいじゃあみんな着替えてー!!」


花井先生のGOがかかったことで、主導権は完全に春瀬くんのものになった。
パンパンと手を叩いて、更衣室へ移動するようみんなを促す。


「ほ、本当にドッヂボールになっちゃった…」


私は春瀬くんの発言力と行動力に驚きながら、少しだけ憂鬱な気持ちになった。
実は、ドッヂボールは苦手なのだ。
ボールが当たると痛いし、逃げ回る緊張感もいやだし、人にボールを当てるなんて絶対にできないし。

ボールを人に当てるだなんて、野蛮すぎるゲームだと思う。

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