オクターブ ~縮まるキョリ~
「うーん、そんなに言うなら…」
春瀬くんは言いながら、その場でTシャツを脱ごうとする。
「ちょ、ええっ!今ここで脱がないでよ!」
ちらりと見えた腹筋にドキドキしながら、私は目の前で大袈裟に手を振る。
いや、もっと見たい気もしなくもないけど、でもやっぱりここで脱ぐのはちょっと…!
「ははっ冗談だって」
両腕を元の位置に戻しながら、春瀬くんはそう言って笑う。
いたずらっこのような表情が、私のドキドキを加速させる。
「あー、ていうかごめんね、樫原」
「えっ?何が?ドッヂを言い出したことなら全然…」
「ううん、そうじゃなくて、恥ずかしい思いをさせちゃって」
春瀬くんは申し訳なさそうにそう言う。
今ここで脱ごうとしたことについてかな、と思った矢先、春瀬くんは意外なことを口にした。
「鼻血、隠したかったよね?みんなに見られるのイヤだったよね?」