オクターブ ~縮まるキョリ~
「……え…?」
春瀬くんの発言に、私は耳を疑った。
鼻血をみんなに見られて、恥ずかしい思いをした。
春瀬くんは、私の体調だけじゃなくて、そんなことまで気にかけてくれてたんだ。
「すぐに隠してあげられたら良かったんだけど、バレちゃったよね」
そう言って、春瀬くんはもう一度「ごめん」と言う。
「…そんな…、全然だよ、気にしてないよ。
むしろ、そんなところまで気遣ってくれて、その…ありがとう」
人のこんな気持ちまで案じてくれるなんて。
ここまで人のことを考えてくれる人が居るだなんて。
私は春瀬くんの優しさと気遣いに内心驚きながら、なんとかお礼を言った。
「それより、校庭に戻らなくていいの?
みんな待ってると思うし、春瀬くんもドッヂやりたかったんでしょ?」
壁にかかっている時計を見ると、ホームルームの時間はまだ充分に残っていた。
「いや、でも俺……」
「失礼しまーす」
春瀬くんが何かを言いかけていたところで、保健室の扉が開かれる。