オクターブ ~縮まるキョリ~
「…樫原、聞いてる?」
上から声を掛けられ、私ははっと顔を上げる。
そこには、首をかしげた春瀬くんが立っていた。
「わっ、ごめん、ぼーっとしてた。」
「悪いな驚かせて。今日、神社に6時に集合だから。」
「あ、うん、わかった。ありがとう。」
「おう。俺、部活あるからちょっと遅れるかもだけど、みんな来るから。」
また後でな、と付け加えて、春瀬くんはその場を立ち去った。
すぐに、クラスの女の子が彼の横に駆け寄る。
その子は、ちらりと私を見やり、春瀬くんに笑顔で声を掛ける。
直前に見せた私への視線は、かなり攻撃的なものだった。
気のせいではない、と思う。
あの日から。
ああいう視線に、時々出会う。