オクターブ ~縮まるキョリ~


あの日、由美ちゃんとした会話が思い出される。
ホームルームでドッヂボールをした日。
顔面にボールを喰らって、保健室に運ばれた日。


……春瀬くんに、運ばれた日。


あの日、永山くんと教室に戻った時、真っ先に駆け寄ってきたのは由美ちゃんだった。


「詩帆ちゃん!大丈夫なの!?」

「あ、うん、大丈夫。ありがとう。」


教室の色んなところから、「あ、樫原さんだ」「大丈夫かな」と声が聞こえてきた。
永山くんはすっと私の横を通り抜けて、自分の席へと向かった。


「良かった…ね、ちょっとこっち来て。」

「えっ、なに?」

「いいから。」


教室に足を踏み入れたばかりのところで、私はまた廊下に連れ出された。
由美ちゃんはあたりをキョロキョロと見回してから、私に小声でこう言った。



「詩帆ちゃん、ちょっとやばいことになってるかも。」


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