オクターブ ~縮まるキョリ~
じゃあまたね、と言って香織は二年B組の教室へと駆け込んだ。
一人になった私は、C組のドアの前まで行って足を止めた。
深呼吸を、ひとつ。
新しいクラス。
どうか、楽しい一年を過ごせますように。
祈りを込めて引き戸を開けると、まず目に飛び込んできたのは教室の中心の人だかりだった。
そして案の定、その中心には春瀬一輝の姿があった。
本当に、本当にこれから一年間、同じクラスなんだ…。
今はあの輪に入る勇気はないけど、せめて、一人のクラスメイトとして仲良くできたらいいな……。
期待とも決心ともつかない思いを抱きながら、黒板に貼られた座席表を確認する。
春瀬一輝の席は、教室の中心。
これから二年C組の中心となる人物にはふさわしい席だ。
「えーっと私の席は……かしはら、かしはら…っと」
『樫原詩帆』の名前は、窓側から二列目、後ろから二番目の席にあった。
知らないクラスメイト達の横を通り抜けて、早速自分にあてがわれた席に座る。
うん、教室全体が見渡せてなかなか良い感じ。
授業で先生に席順で当てられても、一番に当てられることはないだろう。
欲を言えば、春瀬一輝の近くに座りたかったが、私みたいな地味な女子は、遠くから見ているだけで充分だから…。
そんなことを思いながら教室の中心の輪を眺めていると、前のドアを開けて先生が入ってきた。