オクターブ ~縮まるキョリ~


私は拳をぐっと握り直して、3人に向かって言う。


「私、抜け駆けなんてしてな」

「してるじゃん」


今度は左の子が遮ってくる。
忌々しいと言わんばかりに、顔を歪めている。


「自分だけ特別だって、勘違いしてるんじゃないの?春瀬くん、別に樫原さんのことなんて、何とも思ってないから。」

「わ…分かってるよ、そんなこと。」


わざわざそんなこと言われなくたって。
自分でもちゃんと分かってる。
春瀬くんは私に優しいんじゃなくて、みんなに優しいんだから。


そんな春瀬くんを、素敵だと思っているんだから。


「澤井さんたちに言われる前にアタシたちが忠告してやってるんだから、感謝しなよね」

「え……。」


澤井さん。


思いもよらない人物の名前が出て、私は思わず聞き返す。


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