オクターブ ~縮まるキョリ~
どうして、どうしてそこで、明日歌の名前が出てくるの。
これは、明日歌が指示したことなの?
いや、もしかしてこの子たち、「澤井明日歌」の名前を出して、明日歌の力を借りようとでも思ってるの?
クラスで、いや、学年で一番力のある女子だから?
「澤井さん、って…。」
「あんたさぁ、澤井さんに目ぇつけられたら終わりだよ?学校来られなくなるよ?」
「な、なんで澤井さんがそこで出てくるの。」
「決まってんじゃん。澤井さんも春瀬くんが好きなんだから。」
3人の中心に立つ彼女が、バカにしたような目で私に言う。
澤井さんも、春瀬くんが、好き。
明日歌も、春瀬くんが、好き。
なんとなく、分かっていたことだけれど、ハッキリ言われてようやく本当に分かった。
そうか、私、明日歌から視線を逸らしていたんだ。
明日歌の方を見ないようにしていたんだ。
昔は仲良しだったのに、今は離れてしまったから。
気まずくなってしまって、距離をとってしまっていたんだ。
だから、他のクラスメイトの子があっさり分かることでも、確信を持って見抜けなかったんだ。
私が「なんとなく」でしか分からなかったことでも、普通に見ていたら明らかなことだったんだ。