オクターブ ~縮まるキョリ~


長ったらしい校長の話と、口うるさい生徒指導の先生の話が終わり、校歌を歌ってつまらない始業式が済んだ。

生徒達は行きにそうしたようにだらだらと歩いて教室に戻り、全員が席についたところで花井先生が話し始めた。


「では初日ですので、自己紹介をしてもらいましょう。
出席番号1番の人から、どうぞ。」


言われて、窓側の列の一番前の男子が立ち上がる。
名前と、部活と、簡単に一言。
よろしくお願いします、と言って彼の自己紹介が終わると、次は女子。

みんなが入れ替わり立ち替わり自己紹介をしていく。
何人かの男子が、ちょっと笑いを挟んだりなんかして、和やかに進む。


そして、いよいよ私の番。
席を立つと、みんなの注目がいっせいに集まり、急に緊張してしまう。
何か重要な発言をするやけではないのに、何故か試されているような気持ちになる。


「えっと、樫原詩帆といいます。
部活、は、特に入ってません。
……あ、えと、よろしくお願いします」


それだけ言って、そそくさと着席する。
我ながら、なんとつまらない自己紹介なのだろうと思う。
自己紹介というか、もはや名前しか紹介できていない。


まぁ、私ってそんなもんなんだけど。


みんなの自己紹介が続いて、何人か目に立ち上がった女子。
私は彼女の姿を見てドキリとした。
ときめきではなく、緊張の鼓動だ。


「あすか……」


私は昔からの親しい友人の名前を、口の中だけで呟いた。

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