オクターブ ~縮まるキョリ~


立ち上がった彼女は、後ろの方を振り返りもせず、うつむいたまま自己紹介を始めた。



「澤井明日歌です。よろしくお願いします」



言い終わるか否かという内に、明日歌は席に座った。
シンプルといえば聞こえはいいけど、どちらかというと、やる気のない自己紹介だった。
私も人のことは言えないけど、なんだか自分のことを紹介したくないような自己紹介。


そしてすぐ、次の人が自己紹介を始める。
けれど、私の耳にはもうそれは入ってこなかった。


明日歌は、もはや私の知っている明日歌ではない。
そのことを改めて確認して、私は胸がキュっと締まるような苦しさを覚えた。

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