オクターブ ~縮まるキョリ~
色とりどりの花火を次々と咲かせるうちに、残りの花火は春瀬くんが「締め」の役を与えた線香花火だけになっていた。
「これでラストだな。」
春瀬くんはそう言って、ベンチに座った私に線香花火をひとつ渡してくれる。
そして私の隣に腰かけて、線香花火をくるくると指でいじる。
「あんなに沢山あったのに、あっという間だったね。」
「そうだな。楽しいことって、すぐに終わっちゃうんだよなあ。」
春瀬くんはしみじみと言いながら、私の線香花火に火をつけてくれる。
小さな稲妻のような光が、パチパチと弾ける。
赤色の玉がぷくりと生まれ、稲妻の数は段々と多くなる。
繊細な光の糸を見ていると、なんだか儚い夢の中に居るような心地になった。
懐かしい空間。
夏らしい瞬間。
すぐに終わってしまう、楽しい時間。
昔この公園で遊んだ記憶は、ここに来るまで思い出すことがなかった。
私がこうして春瀬くんと花火をしていることも、大人になったら忘れてしまうのだろうか。
光がパチパチと弾ける。