オクターブ ~縮まるキョリ~
「え……」
鼓動が早くなる。
春瀬くん、見てたんだ。
一体どこで?
いつから?
どの場面を?
ある種の焦りと共に、様々な疑問が同時に浮かび上がる。
「部活が終わって神社に向かう時に、お前らが見えたんだ。声かけようかと思ったんだけど、なんかふたりですげー楽しそうだったから、邪魔できなくて。」
神社へ向かう道。
きっと春瀬くんが見たのは、私たちがじゃがバターを食べていたところだろう。
「その時、もしかしてとは思ったんだ。永山は祭りには来ないって聞いてたし、それなのに樫原とすげー楽しそうに笑ってるし。
あとでみんなが噂してるのを聞いて、ああ、やっぱりな、って感じだったよ。」
見ると、春瀬くんの線香花火も、いつの間にか光が落ちて無くなっていた。
「別に俺さ、誰と誰が付き合ってても、当人同士が幸せならいいと思うんだ。
出歯亀をしたり、冷やかしたりするつもりもないし、人のうわさ話なんて気にならない。」
でも、と付け加えて、春瀬くんは言葉を区切る。
そして、意を決したように続きを言う。
「……樫原のことは、気になる。」