オクターブ ~縮まるキョリ~
瞬間、私の線香花火の赤い玉が、ぽとりと地面に落ちる。
まるで、ひとつの物語が幕を閉じたかのような、もの悲しく、寂しい光景だった。
春瀬くんは、言葉を続ける。
「…この前、花火やったとき、みんな言ってたんだ。永山がそう宣言したって。
言われてみればあいつ、お前とはよく話してるもんな。他の女子とは全然喋んねーのに。」
そう言いながら、春瀬くんは私に新しい線香花火を手渡してくれる。
私はそれを受け取るけれど、頭の中はひどく混乱していて、彼の言葉に何の反応もできなかった。
火の落ちた一点を見つめていると、春瀬くんは静かに続けた。
「樫原さ、祭りの日、白い浴衣着てただろ?」
私はそれを聞いて、はっと顔を挙げる。
--だって樫原、結局祭りにも来てなかったろ?
春瀬くんは、さっきそう言った。
なのに何故、私のお祭りの日に来ていた浴衣の色を知っているのだろう。
白地にアサガオの、あの浴衣。
知っているのは、集合場所に居た子たちと、永山くんくらいだ。
もしかして……。
ゆっくりと春瀬くんの顔を見ると、春瀬くんはばつが悪そうな表情をしていた。
「ごめんな、嘘ついて。俺、見たんだ。樫原とあいつが一緒に居るところ。」