The side of Paradise ”最後に奪う者”
「今度、涼抜きでお茶でもいかがですか」
名刺入れをから洒落た名刺を差し出した。
仕事用じゃない、プライベート用のだ。
涼は鼻先で笑った。
「抜かれる本人の前で話をするなよ」
綺樹は涼の言葉を無視して名刺を指先で挟むようにしてとると、さっと目を走らせて、瞬へと少し持ち上げた。
「覚えたから返す。
紙が増えると困るから」
その意味がわかった涼は笑った。
「そうだな。
ただでさえ書類の山だ」
綺樹は肩をすくめた。
「休職の今ぐらいは少ない方がいい」
そして瞬を再び見上げた。