The side of Paradise ”最後に奪う者”
「暁子、和歌作れる?
成介の野郎、今年の曲水の宴は絶対出ないと宣言しやがった。
その位、代わりにやれよなあ」
暁子は目をぐるりと回した。
「うわっ、旧家って大変ね」
「1週間、徹夜で仕事する方がマシだ」
「おおぅ、そっちの方も身震いするわ」
「明日、先生のところで稽古なんだが、宿題の1首もできていない。
暁子も考えて」
「それ、業務命令?
まだ契約済んでいないのに」
そう言いながらも、考え込む表情に涼は微笑した。
携帯が震えたのに、テーブルの下で確認すると、秘書から明日のスケジュールの確認メールだった。
その下の件名が無題のメールに、内容を思い出した。
綺樹が、今日は大学の仕事が遅くなるから、タクシーで帰ると書いてきた。
もう、いくらなんでも帰っているだろうな。
9時を過ぎている。
「1首出来たわよ」
涼は我に返って顔を上げた。
「やっぱり頼りになる」
にこやかに笑いながらも、涼は携帯を手にしたままだった。