契約妻ですが、とろとろに愛されてます
琉聖さんは適当に散らばった書類をまとめると、カバンの中に入れてベッドに近づいてきた。


「何か体調がおかしいと思ったらすぐにナースコールをするんだ いいね?」


目頭が熱くなりじんわり涙が滲んでくるのを感じて頷くのが精一杯だ。


琉聖さんが静かに病室を出て行った。初めて一人っきりになる夜の病室だった。


途端に心細くなる。


大丈夫、子供じゃないんだから……。


自分に叱咤するも、やっぱり琉聖さんのいない病室は寂しい。でも、これ以上琉聖さんに依存するわけにはいかない。私達は契約の関係だから……いつ解消されても何も言えない。解消される前にいつでも受け入れられるようにしなければ……。





琉聖Side


マンションに戻った俺はシャワーを浴びた。シャワーを浴びて少しだけ眠ろうとした。だが、眠りはやってこない。それどころか、目が冴えて、柚葉を考えている。


どんな夢を見たのだろうか、入院が長引き情緒が不安定になっているのか……。


それにしても、ことあるごとに契約を口にする。


ひとりで大丈夫だと?何を強がっているんだ。柚葉から病名を聞かれ、正直に答えたと玲子から知らされた。ショックを受けた様子は見られなかったようだが、今日のことを考えても、柚葉は迷惑をかけないよう俺から離れようとしているのかもしれない。


俺が愛しているのがわからないらしい。……それもそうだな、柚葉も俺を愛しているのかわからない。好かれてはいるのだと確信はしているが。そろそろ契約で縛られた関係はやめなければ。


何度も寝返りを打ち、俺は眠るのをあきらめた。柚葉が心配でならない。


ベッドから降りると、出掛ける支度をした。


車がマンションの駐車場を出たのは朝の五時過ぎ。すでに外は明るいが、もう少しで太陽が昇る所だった。


病院の駐車場に車を停め、救急の入り口から中へ入ると、柚葉の病室へ向かう。


静かに病室のドアを開けると、柚葉は眠っているようだった。近づくとあどけない子供のような寝顔で眠っているのがはっきり見えた。触れたくなるの我慢し俺は病室を後にした。

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