契約妻ですが、とろとろに愛されてます
そんな柚葉に俺が小さくため息を漏らす。それが癪に障ったのか柚葉は驚くようなことを言った。


「琉聖さんが行かないのなら一人で出掛けてくるからっ」


まさかそんな言葉が返ってくるとは思わなかった俺は舌打ちしたくなった。


「何を言ってるんだ?」


「琉聖さんがだめって言っても行くからっ」


ガタンと乱暴にイスから立ち上がった柚葉は俺に言った。


「柚葉!」


俺があっけに取られていると、柚葉はウォークインクローゼットに向かっていた。


棚に置かれたバッグの中身を確認し、茶色のハーフコートを手にした。


俺はどうしたものかと考えた。確かにこのドライブを柚葉は子供のように楽しみにしていたのは知っている。しかし昨晩のことがあったのに、連れ出すのは出来ないと思った。


クローゼットを出ようとする柚葉の前に俺は立ちふさがった。


「どいてください」


俺の身体を押しのけようとするが、柚葉のか弱い力などビクともしない。


「ゆず、わかってくれ」


「わからないですっ」


俺の腕を振りほどこうとしている。しだいに柚葉の目から涙がぽろぽろ溢れ出した。

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