契約妻ですが、とろとろに愛されてます
私は応接室の前で深く深呼吸してからドアをノックをした。


中から「どうぞ」と言う声がして私はドアを開けた。


「失礼します」


ドアを閉めて頭を下げてから正面を見据えると私は固まった。


「どうして……?」


第三応接室のソファに真宮さんが座っていた。


私を見て真宮さんは喉の奥でクッと笑う。


「相変わらず君は新鮮だな」


「どうしてこんな所に?」


「こんな所とはひどいな 自分が勤めている会社だろう?」


「そう言う意味じゃ……どうして私がいるって……?」


「話がある」


もう!私の質問には無視ですか?


「座って」


真宮さんは斜め前のソファを顎で示す。


不満な表情を隠さずに私はソファに腰をかけた。


仏頂面の私の顔を見ても、真宮さんの楽しそうな表情は変わらない。


「話というのは」


「は……い……」


「婚約して欲しいんだが」


「こ、婚約……?」


「ああ、だが本当に結婚する必要は無い お袋の見合い攻撃と女たちから逃げられればいいんだ」


「どうして私に?」


訳がわからない……この人ならば喜んで話にのる人はいるはずなのに。


「お袋が君を気に入っているんだ」


「だからって私じゃなくても」


「あくまでも契約だ 本気になってもらっては困る」


「本気っ?当たり前です!ですが、偽物の婚約なんてありえません!」


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