契約妻ですが、とろとろに愛されてます
******


目が覚めると琉聖さんは久しぶりに明るい顔で骨髄が見つかったと言った。


だけど、今の私にとって嬉しくなかった。


喜ぶ琉聖さんを前にして、私は直視できなくて目を逸らした。


「ゆず?」


琉聖さんの怪訝そうな声に、私は大きく息を吸うと口を開いた。


「琉聖さん……私……」


琉聖さんが喜んでいるのに水を差したくなかった。


けれど、今ハッキリ言わないといけない……。


「どうした?まさか、嬉しくないのか?」


「私……このまま……」


その先は言葉に出来なかった。


涙が溢れ出てその先を告げられない。


「ゆず?このまま……!!!」


琉聖さんの顔が涙で歪んでいく。


「ゆず!?このまま死にたいと言うのか!?」


琉聖さんはいつになく声を荒げた。


真剣な顔で、だけどすぐに苦痛を受けた表情になった。こんな様子は初めて見る。


私は胸を鷲掴みにされたみたいに痛くなった。



「ごめんなさい……」


私の口から謝る言葉しか出ない。


涙がとめどなく次から次へと溢れ出る。


死ぬのが怖いから泣いているんじゃない。


私はもうこの痛み、苦しみ、辛さから逃れたいと思っている。


こんなことを言ったら、献身的に看病してくれている琉聖さんを裏切ることになる。


申し訳なくて……琉聖さんが心配で……。


涙が止まらない。





< 299 / 307 >

この作品をシェア

pagetop