契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「だめだ!命をあきらめるのか!」


琉聖さんは廊下にまで聞こえそうなほどの声で問う。


「琉聖……さん……?」


「柚葉が大変な治療に耐えているのはわかっているつもりだ。辛いのもわかる。だが……どんなに辛くても人間は生きることをあきらめてはいけないんだ!お願いだ!治療を受けると言ってくれ、助かって欲しいんだ!俺を置いて逝ったら許さない!」


琉聖さんは寝たままの私をギュッと抱きしめた。


伝わる振動……。


顔が見えなけれど、私を抱きしめる琉聖さんの肩が小さく震えている。


琉聖さん……泣いている……?


「……お願いだ!治療を受けてくれ 愛しているんだ このまま死んではいけない!まだ一緒にやりたいことが数えきれないくらいあるんだ!」


琉聖さんの声は力強いけれど、かすれていた。男泣き……。


私は琉聖さんを悲しませている……。


「ゆず!お願いだ、まだ君は生きられる」


その声が私の心に響いてくる。


一緒にやりたいこと……そうだった……。


迷惑ばかりかけている私をこんなにも愛してくれている……。


「ゆず……お願いだ……命を放棄するな……まだ生きられるんだ」


久しぶりに抱きしめられて忘れかけていた甘いひと時を思い出した。


そうだ……私は琉聖さんを愛している……琉聖さんを悲しませたくない……命を放棄してはいけない……。


琉聖さんの言葉が胸に突き刺さる。


まだ……琉聖さんに愛されたい……。


私は力の入らない腕で精一杯、琉聖さんの身体を抱き返した。




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