契約妻ですが、とろとろに愛されてます
会社の人の目を避ける為、少し離れたレストランを選んだ。


空いている席に座ると、麻奈が口を開く。ここまで来る途中、何も聞かなかったということは、ちゃんと一から聞きたいからだろう。


「で?ゆずの婚約者は真宮 琉聖さんよね? いったい会ったばかりでどうして?」


私は麻奈に経緯を正直に話をした。





「1500万円ねえ……そりゃ すぐに用意は出来ないわよね」


そう言って麻奈が重いため息を吐く。


「うん……だから、この指輪は本当は私の物じゃないの 借りているだけ 偽の婚約だから……」


別れたら売ればいいと言った琉聖さんの言葉を思い出してしまった。借りたお金も時間はかかるけれど返す。この指輪は手元に置きたくないし、売りたくもない。琉聖さんが好きなように処分すればいい。


「真宮さんは1500万円、何に使うのか知っているの?」


「ううん……なぜ1500万円欲しいのかって聞かれた時、婚約解消後は会社に居られないからってつい言っちゃったの だから別れた後の生活費だと思ってる」


「そっか……しばらくは大変だね」


「うん」


あの時、意地になっていて正直に打ち明けたくなかった。


「まあ、本当のことを言わない方がいいかもね?どのくらいの期間かわからないけれど、別れるんだから計算高い女に思われていた方がいいかも。その方が後腐れなく別れられそうじゃない?その間にたくさん買ってもらっちゃえば?」


麻奈の言うように計算高い女でいたら、琉聖さんに嫌われ、別れる時苦しい想いをしなくても済む?


「……ゆず、契約どおり本気になっちゃだめよ?」


「わかってる……」


ウェイトレスがランチプレートを運んできて私達は食べ始めた。
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