契約妻ですが、とろとろに愛されてます
琉聖さん……。


私は閉まったドアをしばらく見つめていた。ふう……と、重いため息を吐いてドレッサーの前に座る。座ってみると自分の足がさっきのキスで震えていることに気付いた。


鏡に映るネックレスを見て目が大きくなる。指輪より大きなダイヤを囲むようにして小ぶりなダイヤがハート型を作っている。


もしかして、指輪より高価じゃ……。


震える指はおそるおそるそれを触る。


落としてしまったら大変だ。気を付けなければ。


視線を唇に移すと、艶やかに光を放っていたグロスは先ほどのキスでなくなっていた。


琉聖さんのキスは好き……。


軽く唇を重ねるキスは何度かしたことはあるけど、琉聖さんがするようなキスは初めてだ。


琉聖さんにキスをされると夢中になってしまう……だから怖くて拒絶していた……。



数分間はぼんやり物思いにふけっていたらしい。


ドアが開いてダークグレーのスーツを着た琉聖さんが入ってきた。


その物音にハッとしてグロスをつけ直した。



支度が終わると、琉聖さんは何も言わずに私の肘を取ってマンションを後にした。
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